『真実が顕わになった…私の瞑想効果』 平明 創

 

  私はかなり高慢な中年男性です。
  初めて地橋先生からヴィパッサナー瞑想の直接指導を受けてから8か月を過ぎましたが、今でも高慢です。ただ、瞑想を始める前はそのことに気づいていませんでした。
  今では一日に何回も“高慢”とサティを入れ、自分で気づけるようになりました。昔から他人を見下し、妻を見下し、自分の考えこそ正当なのだと信じて疑わない人間でしたので夫婦喧嘩もしょっちゅうでした。
  ところが瞑想をするようになってから妻からは「やさしくなった」、息子からは「お父さんて、そんなにやさしかったっけ?」などと言われるようになり、びっくりするとともに以前の自分がやさしくなかったことに気づかされ、ショックも受けました。自分の中の微弱な怒りや嫌悪感も以前よりは気づけるようになったので、そんな時はなるべくエゴをださないように気をつけて、妻との衝突も少なからず回避できるようになりました。たまに言い合いになっても、以前は妻に対する怒りが尾を引いていましたが、今では、怒りを発する前に気づけなかった自分が悪かったのだと反省します。
  瞑想を毎日やってきての個人的な感想ですが、成果は坂道を徐々に上っていくといった感じではなく、ひとつの大事なことに気づけると次のステップに行き、またがんばると次のステップに行けるように、階段を上っていくような感じがしています。私の場合、先生に初めてご指導していただいてすぐに“他人の評価が異常に気になる”とサティが入り、なぜか悲しくもないのに涙があふれ出るといったことがありました。
  そのことに気づいて以来、人と接するのが以前より疲れなくなりました。しばらくして“いばりたい”“ほめられたい”自分に気づいて、自分の中にいわゆるアダルトチルドレンの要素があると認識するようになり、自己顕示欲が顔を出す度にサティが入るようになりました。そして今度は長年身体に感じていた感覚が怯えからくる恐怖感ではないかと気づくようになり、1Day合宿に参加させていただいたのです。
  両親からの虐待やトラウマなどの記憶がない私には、自分の恐怖感がどこからくるのか思い当たる節はありませんでした。しかし先生とのカウンセリングでそれが解明されました。子供のころから父との間には確執があるとともに威圧を感じていましたが、暴力を振るわれたことはなく、父との不和の原因は不明でした。
  先生のご指摘は、祖父から暴力を受けていた父が自分の子供(つまり私)に対して手を出すのを押しとどめるのはものすごい自制が必要なことであって、それによって怒りのオーラが出てしまい、それに対して幼かった私が怯えていたのではということでした。
  まさに目から鱗でした。先生のご指摘は的確だったと思いました。なぜなら四半世紀近くほとんど毎日飲んでいた酒を合宿参加以来全く飲みたいとも思わなくなったからです。酒を飲み続けていたのは潜在的な恐怖感を紛らわすためで、その原因が分かったことで酩酊する必要がなくなったのだろうと思います。
  こうして断酒できたのも(まだ5カ月ですが)瞑想によって自分の中に隠れていた恐怖をあぶり出すことができ、またその原因を先生の洞察によって明らかにしていただけた結果に違いないと確信しています。
  瞑想をすればするほど、気づけば気づくほど自分の未熟さや幼稚さを痛感させられて、なんとも情けない思いになり自分がいやになることもしばしばですが、自分の内面に気づくことによって人生が大きく改善されるということも実感することができましたので、私にとってこの瞑想に出会えたのは何よりの幸運でした。そして50歳を前にして、ようやく自分のやるべきことが心の汚れを取り除くことであると自覚させられるのでした。