『人生のどんでん返し ―ヴィパッサナー瞑想との出会い―』 前田晃幸
私はヴィパッサナー瞑想に出会ってから現在までに考え方が変化したことを、「怒り」「視点」「無常」の3項目毎に述べていきます。
まず「怒り」です。
私は、表面では短気で怒りやすいタイプに見えませんでしたが、怒りを溜めこむ人間でした。
「お前の子孫、3代先まで恨んでやる!!」を合言葉に、一度、嫌がらせや、裏切った嫌いな相手を許さず、他の人と一緒にその相手の悪口を言うのが楽しく、「悪口を言っても、私たちに嫌な思いをさせたので、当然の報いだ!!」と当然の権利だと思っていました。
ヴィパッサナーを学んでからは、怒りを受けても怒りで返さず、日常生活では職場等で皆が誰かの悪口を言っていても、その輪には入らず、淡々と自分の仕事に集中するようにすると、最悪の人間関係にはならず、人から完全に嫌われることがなくなりました。
しかし、まだ私も修行が足りず、悪口を言ってしまう事がありますが、その時は対象に対し、懺悔の瞑想をするように心掛けています。またヴィパッサナーを知るまでは「後悔=怒り」と知らず、失敗や取り返しの出来ない事をやってしまったら、一人で後悔し続け、「取り返しが出来る時までタイムマシーンで戻れれば良いのに!!」とばかり考えていました。そんな後悔の考えは非常に自分自身を苦しめ、まさに、「こぼれた牛乳を嘆いても仕方ない」を理解していても嘆いてしまうという悪循環でした。今は多少後悔するものの、「失敗しないと勉強出来なかった」と思うようになり、これから改善して今から出来ることを考え行動しています。
2番目は「視点」です。
昔から「相手の立場に立って考えろ」と自分自身では十分理解したつもりでした。しかし私に対して嫌がらせ等をした人たちを許せず、理解に苦しむことが多くありました。ヴィパッサナーを学んでからは、その行動が相手にとっては正しく、様々な事情、自分の立場を守るために行っているのだと思えるようになりました。また私も昔は、誰かの視点で見ると、相手が傷つく事をやっていたんだろうと思います。
最近では、奇妙な行動を取る人でも、相手の視点になって見てみると、その奇妙な行動を取る理由、育ち方をしてきたのではという原因が見えてきて、大部分の人を差別しなくなりました。
最後に「無常」です。
ヴィパッサナーを知るまで「無常」という考え方を知らず、苦しんでいました。どんな人も次に会うときには違う考え方になっていると気付くと、ずっと対象に対し執着していた自分にバカバカしくなりました。
そして、エベレストに登山する時の重い荷物のように、人、物、時などに執着していたんだと気づき、それらを手放すと心が軽くなりました。最近では久しぶりに会う人に対し、どういう人格に変化しているのか、無常を楽しむようにして会っています。以上、ヴィパッサナーに出会ってからの変化を述べみました。
学び始めた当初は自分の中で理解している自分と、納得しない自分で葛藤していましたが、今では少しずつですが物事を客観的な視点で観て冷静な対応が出来るようになっています。
そして冷静な目で周りの人たちを観察すると、多くの人が、私が今回取り上げさせていただいた「怒り」「視点」「無常」の3点で悩んでいることにも気づきました。
しかも多くの人が、悩みの原因にすら気づかず、他人へ非難することにより自分の正当性を認める行動や、酒などの一時的な快楽に走り、表面では解決出来たように見えても、何も解決していない人生を送っているのにも驚きでした。
しかし私も一年近く前までは同じ状況だったのです。そのことを忘れずに、苦しんでいる人を見ると昔の自分を思い浮かべ慈悲の瞑想をするようになったのも、ヴィパッサナーで智慧が付いたからだと考えます。
これからも時折、辛いことが起きたら「自分の成長には必要な出来事」、物事がうまく変わらず焦った時には「物事は少しずつしか変わらない」というヴィパッサナーで学んだ言葉を思い出して冷静な心に立ち戻り、毎日10分の瞑想を努めてまいります。