『真実を見つめた先にあるもの』 M.N.
昨年、夫婦の諍いがきっかけで長男が精神的に不安定になり、一時期は学校にも行けなくなりました。それまで積み上げてきたものすべてが崩れていく様を目の当たりにして、私は焦りと不安で一杯になり、それがさらに状況の悪化を招きました。そんな繰り返しの毎日を少しでも好転させたい、その一心で辿り着いたのがこのヴィパッサナー瞑想でした。
すがるような思いで朝カル講座に飛び込んだのが今年3月、GWには初心者ながら10日間合宿に臨みました。はじめは帰りたくて仕方ありませんでしたが、すぐに気持ちを切り替え、真剣に瞑想に取り組みました。なぜなら、母親である私に10日も家を空けることを許してくれた主人と子供たちのため、何が何でも自己変革するぞ、との強い思いがあったからです。それは私の人生の素晴らしい転機となりました。
ダンマトークでは原始仏教の教えの明晰さに何度も感激し、9回に及ぶ面接では、両親に対する視座の転換が起きました。私は親への不満から思春期の頃より精神的な問題を抱え、カウンセリングを学んだりと、20代はその解決のために使い果たしたと言っても過言ではありません。そうまでしても解決しなかった心の葛藤が、たった10日で両親、そして祖母(抑圧されていた本当の原因)への感謝に変わっていったのです。
その後、すっきりとした頭で瞑想に取り組むと、ビシ!バシ!サティが入るようになりました。手足には電気が走っているかのような感覚があり、坐る瞑想では青白いほのかな光が見えました。これまで感じたことのない幸福感でした。この素晴らしい成果は何よりも地橋先生の全力のご指導と、これまで多くの方々に行った面接経験の結晶であることに深く感謝しています。
その後6月に短期合宿、7月に1Day合宿に参加させていただきました。8月には静岡で集中内観をし、祖母に対する自分をさらに深く観ることができました。それ以来、祖母のことを思うと、涙の出ない時はありません。
9月には悪天候のため持病が悪化、気持ちも後ろ向きでした。こんな時こそ瞑想だと分かっていても心は落ち着かず、5分もできない日もありました。そんななか、10月に2回目の1Day合宿に参加させていただきました。10日間合宿以来、こんなに憂鬱な気分で合宿に臨むのは初めてでした。何とか一日乗り切りましたが、特に成果を感じることなく歯がゆい思いで終了しました。しかし、帰宅後、いろいろと変化が起きたのです。
まず、日常の動作にすんなりとサティが入るようになりました。いつも頭の中でおしゃべりをしていて、そこに居なかった私が<今、ここ>に存在している実感が得られるようになりました。これは私にとって大きな変化であり、かなり楽になったと感じます。また、子供の言動にイライラするような時でも、サティを入れることで乗り切れるような場面も出てきました。
気持ちの上でも変化が起きてきています。瞑想に出会うきっかけとなった苦を受ける寸前の私と長男は、目標を持っていきいきと毎日を過ごしていました。その状態が忘れられず、ものすごく執着していることに気づいたのです。失ったものを嘆き悲しみ、そのことが次の悪いカルマを作っていると知っても、いつまでも手放すことができませんでした。ここにきてようやく、過ぎたことは仕方のないことだと、受け入れられるようになりつつあります。
今、その時点から瞑想に出会うまでと同じ時間が経ちました。はじめに望んだように、そこを起点として私の心は大きく変遷を遂げています。息子も私との会話で笑顔を見せるまでになりましたが、ここまで困難な場面も幾度となくありました。しかし人は事実を事実として認識すれば、自然に頭を垂れ、感謝できることを内観で知りました。瞑想の修行と反応系の修行は、わたしにとっては車の両輪のようにそのどちらも必要なものです。いつの日か息子のおかげで私の人生が深い学びのあるものになったと感謝する日が来る。そう信じてこれからもこの道を歩んで行きます。そしてその先に何が見えるのか、楽しみに待つ自分がいます。