『やっと出会えたヴィパッサナー瞑想』(ピーマン)
私は、ヴィパッサナー瞑想の指導を、今年の4月から朝日カルチャーセンターで受け始めたばかりです。まだ全くの初心者なので瞑想について十分に知識も持っていませんし、実践においても本当に少しの時間しか行っていません。でも、こんな短い時間でも随分と人生が楽になりました。私がどのようにヴィパッサナー瞑想に出会ったか、そしてどんな変化があったかを書きたいと思います。
私は一人娘として神戸で生まれ育ちました。父は独裁者みたいな人で、私はとても苦手でしたが、会社経営に忙しくてあまり家にいることがなく、ほとんど関わらずに済みました。そのかわり、近所に住む母の大親友が頻繁にやって来て、ほとんど家族同然、私には母が二人いる感じで、なんの不満もなく楽しい満ち足りた毎日でした。
二十歳の頃、バレエで痛めた膝と腰のリハビリのために始めたヨガで瞑想のことを知りました。今まで知らなかった深遠な精神世界が新鮮で合宿にも参加しましたが、対象にうまく集中できない→集中しようと頑張るとなぜか眼が痛くなる→苦しい、の繰り返しでいつしか疎遠になってしまいました。
そして結婚。でもその1年後、神戸の中心部で阪神淡路大震災に遭い、私は最愛の母を亡くしました。母の遺体を引き取りに行こうにも、街が壊れていて車も出せず、ようやく警察のご厚意で遺体と対面したときは既に悪臭が漂っている状態でした。急ピッチで作られた母の棺とともに火葬場に行きましたが、そこは火葬の順番を待つ人たちの長蛇の列で、悪夢のような光景でした。
ほんの数日前までは永遠に続くかのような楽しい毎日だったのに、元気だった母は亡くなり、美しい神戸の街は壊れ、周囲の人々は泣き悲しんでいる。私は世の中のはかなさを痛いほど感じました。それと同時に、こうして生かされているからには明るく生きていこうと決意したのです。
震災から4年後に息子を授かりました。変わった考え方をする子で、私は結構気に入っています。でも学校に通うようになってからは先生や同級生に誤解されることも多く、いじめにも遭い、私は対応にくたくたになりました。息子も段々と頑なになっていき、トラブルの最中には彼がデビルに見えたこともありました。そして、「何で私だけこんな目に!」とひがむことも。
私は、以前のような明るい生活を取り戻すため、海外の豪華リゾートに行ったり、ホテルでランチしたり、バーゲン巡りをしたりをするようになりました。そしてそのうち、もっと豪華なところ、もっとおいしい食事、もっと素敵なお洋服、と、もっと、もっと、もっと・・・、どんどんエスカレートしていきました。でも、その時には楽しく笑っていながら、心の奥底では乾いた虚しさも感じていました。世の中にはもっと透明で深遠な世界があったはずなのに・・・。あれ?こんなんじゃなかった?なんだったっけ?
そんな状態が続いているうちに、だんだんと周囲の人との関係も良くなくなり、体調まで崩すことが多くなっていきました。健康には人一倍留意していろいろなボディワークを行い、高い漢方薬を飲んで鍼灸にも通っていたのに、です。「これはひょっとすると精神的な問題?」と感じ始めたころ、私は原因不明の病気になり寝たきりになってしまいました。その時、瞑想のことを思い出したのです。
Googleで採用されたマインドフルネス瞑想のことが気になっていたので、ヴィパッサナー瞑想の翻訳本を取り寄せてみました。そして、最初の数ページ読んだだけで、これが私の探していたものだと解かりました。
私は早速実践してみることにしました。病気の症状による背骨の痛みでゆっくりしか動けない為、かえって痛みの観察とラベリングには最適でした。また、先の見えない状態から心は不安でいっぱいでしたが、すぐにその不安も少なくなって痛みも和らいでいきました。
ベッドの中で、慈悲の瞑想も繰り返しおこないました。驚いたことに、速効的に家族との関係が今まで以上にとても良くなり、落ちついた安らぎを感じ始めたころ、身体も徐々に回復していきました。発病からは3か月ほどが過ぎていました。
すでにそれまでに、「元気になったら瞑想を習いに行く!」と決めていましたので、迷わず朝日カルチャーセンターに飛び込み、今に至っています。そして、地橋先生にご指導いただくようになって4か月、様々な変化がありました。
@慈悲の瞑想で人間関係がとても良くなりました。また、苦手な人にも過剰に気を遣わなくて済むようになりました。何より自分自身がとても暖かく柔らかいベールに包まれたような優しい気分になります。
A歩く瞑想で、こころに浮かんだことを掴まず手放すことが少しできるようになりました。とても気持ちの良い感覚です。
B日常生活でのラベリングで、くだらない妄想に巻き込まれることが少なくなり、結果心配ごとが減りました。
C因果論を知り、息子を心から受け入れられるようになりました。いままでも心理学を学んだりして、息子を理解しようと努めてきましたが、根っこのところでどうしても受容できていませんでした。それが原因で起こっていたトラブルも激減しました。
D知らなかった自分が少し見えてきました。おっかなびっくりしています。
E地橋先生のダンマトークで新しい人生の見方を知ることが出来ます。毎回ワクワクしています。
こんな面白いものに出会えちゃった、というのが私の今の正直な感想です。でも、これから修行が進んだらきっと嫌な見たくない自分も出てくるでしょう。怠け心も起きると思います。それでも今の気持ちを忘れず、明るく楽しんで自分を観ていきたいと思っています。
最後になりましたが、この原稿を書く機会を与えていただいたことに深く深く感謝申し上げます。ありがとうございました。